連続ボドゲ小説 〜カタンの開拓者たち〜 1

連続ボドゲ小説は、まいたーん!企画班である「所長」がボードゲームの設定を妄想して文章化したものです。

【カタンの開拓者たち】

1.開拓のはじまり

僕たちが辿り着いた島は、さまざまな地形が織りなす自然豊かで、美しい場所だった。

長い時間をかけ、大海原を渡ってやってきた開拓者たちの楽園になるはずだった。

入植は信じられないほど困難な作業の連続だった。

岩を切り崩し、畑を耕し、木を切り、羊を育て、土を掘る。

故郷を飛び出した時には、300人以上いた働き手の男たちはどんどん身体を壊していったが、その甲斐もあっていくつかの村が島中に出来るくらいにまで発展した。

本国からの追加人員もあり、島での結婚、出産などで人も増えてきた。

僕が父に連れられて本国を出た時にはまだ3歳だった。それから23年経ち、僕は26歳になる。

僕の母は、この島に来る船に乗る事を拒否したと僕は教えられている。ゆえに、僕には母の記憶が全くない。

父はこの島…..カタン島の開拓を本国から任された、指導者の立場にあった。

父は島を拓いた偉大な人物として、名を残すだろう。

……確かに最初の頃は偉大だったかもしれない。

だが、今は少し豊かになって貿易も出来るようになってきた島の利益を独占しており、仲間たちには恨みを買っている。

父は唯一の肉親なので、僕がどう思っているかも、周りからどう思われているかも伝えたが、反応は薄かった。

この23年間で、父は他人の忠告を聞かない人間になっていた。

で、あるがゆえにあの事件が起きても僕はそれほど衝撃は受けていなかった。

2.事件

事件が起きたのは、ある春の夜だった。

その日、僕は友人の誕生祝いのため、たまたま家を留守にしていた。

宴を終え帰ったとき、家には人だかりが出来ていた。この村では1番大きな屋敷だった。

武装して屋敷の警備をしていた者がいたので、話を聞いた。

「オスヴァルト。何があった」

「お前どこに行っていた…..落ち着けよ、お前の親父さんが襲われた」

「襲われた? 犯人は。誰がそんなことを?」

「俺もわからない。悲鳴が上がった時にはすでに現場には誰もいなかったからな」

オスヴァルト以外にも警備兵は2人いるが、犯人を捜索に向かっているのか、その場にはいなかった。

「親父はどうなった?」

「……ループレヒト。親父さんは……すまん。もう生きてはいなかった。ナイフで首を斬られていたんだ」

「親父を見せてくれ」

僕は家に入り、事件現場で横たわっている父に駆け寄った。ベッドの上だった。寝室で殺されたのだ。

使用人の女と、妹のイレーネが側で佇んでいる。ランタンの火に照らされたその横顔は、震えているように見えた。

「イレーネ。大丈夫か」

「私は無事です。ループレヒト兄様」

「あとは僕に任せて、下がるんだ」

僕は物言わぬ父の横に中腰で座る。

父の顔は紫に変色しており、首には確かに傷があった。そこからの出血はそれほどでもなさそうだったが、切られた場所が悪かったのか。

床には割れたグラス。室内で目立つのはそのくらいだ。犯人と揉み合ったにしては、乱れはあまりなかった。一瞬でやられたとなれば、相手は手練れか。

「父は、この島の開拓を任されていたのだから、殺されたとなればただでは済まない」

「ループレヒト兄様。本国へは手紙で知らせましょう。届くのは1ヶ月後になりますから、それまでは兄様が代理にならなくてはなりません」

イリーナは思ったより冷静だった。

僕は頷くしかなかった。

本国の決定が知らされるのは少なくとも2ヶ月以上先だ。おそらくは別の代表者が送り込まれるだろう。それまでは、僕が島の内政を仕切るしかない。