連続ボドゲ小説 〜カタンの開拓者たち〜 4

連続ボドゲ小説とは、まいたーん!企画班所長がボードゲームの設定を膨らませて文章化した非公式な作文である。

7.本国からの使者

父の死から1年。カタン島の諸勢力は4つに分かれていた。本国からの使者が海を越えて我が家に姿を現したのは、ちょうど父の一周忌を終えた次の日だった。

「遅れて申し訳ない。正直、内情が混乱しておりカタン島の開拓についての事案は後回しになっていた。遅ればせながら、本国の決定を伝える」

使者は女性だった。マヌエラと名乗った彼女はまだ若く、僕と同じ程度の年齢に見えた。ブロンドの髪が美しく、とても辺境の開拓地に似つかわしいとは思えない。

いや、似つかわしいかどうかは島から外に出ていない僕には判断できないことだろう。

「ループレヒト殿。本国は今、周辺国との緊張が高まっている。下手をすれば、戦争になる可能性があり、資源に乏しい我が国は不利な立場にある。

貴殿らからの報告によれば、カタン島は自然豊かで、発展する余地が高いと思われる」

マヌエラは淡々と話す。聡明な印象を持たせる女性だった。

「ゆえに本国ではカタン島の生産力に期待をしている。これまで減免していた税は来年より徴収を開始する」

「マヌエラ殿。まだまだカタン島は開拓すべき場所があります。税の徴収はまだ難しいのでは……」

僕は慌てて話を遮ったが、マヌエラは首を振った。

「無論、島の住民にも食料が必要であり、発展するためには資材が必要だ。

それは理解している。余剰の資材や食料だけ、税の対象としたい。

私はこの島に3年滞在を命じられている。役目は島の状況の報告と、税の徴収だ」

「つまり、今後、死んだ父の代わりの人間はマヌエラ殿ということになる。ということでよいのですか?」

「それに近い形だな。私の部下も10名ほど滞在する」

「実は……今のカタン島は私たちの地区といくつかの村以外は私たちが統率を取っていないのです。

各有力者が思い思いに開拓や生活をしており……」

僕の伝えにくい報告にも、マヌエラは眉ひとつ変えなかった。

「なるほどな。ループレヒト殿の父上の死後は誰もまとめられる人材が居なかったか」

「無理にまとめようとしても、喧嘩になるだけだと判断しました」

「今はそれでよいかも知れないが、開拓が進み住民が増えれば、いずれは統率を取って自治してもらわないとならない」

マヌエラは一息ついて、こう尋ねてきた。

「課題は色々あるが、我々が住む場所をまずは決めておきたいな。野宿は御免被る」

本国からの使者達を、私は使われなくなった村の集会場に案内した。今はここしかないのだ。

あまり綺麗とは言えない集会場を目にして、マヌエラは腕を組んでため息をついた。

「まずは、我々の住居を作るところから始めるとしようか。開拓地への出向というのは大変なものだ」

8.発展に向けて

マヌエラら本国の使者たちは、他の地区にも足を伸ばし、しばらくの期間勢力分析を行っていたようだ。

僕たちは僕たちで、交易や生産に忙しい。

マヌエラが言う通り、カタン島は資源が豊富だ。噂を聞いてか、海の外からの移住希望者も増えてきている。

僕たちはもっと労働力が欲しかったので、イリーナやオスヴァルドに審査を任せて、問題のない人物には居住許可を与えた。マヌエラも反対はしなかった。

石材を切り出して村といえる規模だった地区を、街と呼べるものに発展させる。

そしてさらに生産性を増し、交易を栄させるのだ。

これがよい循環となり、発展が発展を呼ぶ。

だが、ある日マヌエラが私の家を尋ねてきた。

「ループレヒト殿。貴殿の地区は調子が良いようだな。木材と小麦が今年は余剰しているようだ。

この2点については、税として本国に収めてもらう」

「あ、そ、そうですか。わかりました」

マヌエラは流石に本国の使者だった。よく見ていたのだ。ごまかしは効きそうにない。

「他の地区もいろいろ調べているが、ミドラ地区は発展が著しいな。街道を伸ばして、かなり大きな街を作っている。ループレヒト殿らも、うかうかしておられませんな」

間の悪いことに、たまたま帰ってきていたイリーナが現れた。住居は港に構えているが、時折報告も兼ねて帰ってくる。

「マヌエラ殿。お仕事熱心で敬服致しますわ」

全く敬服している様子ではないイリーナ。

「そうやって、ループレヒト兄様の競争心を掻き立て、多額の税を払わせ本国で出世しようという目論見でしょうが……。貴方に何を言われても、私たちはどんどん発展していきますので、どうぞお構いなく……!!」

「イリーナ。下がっていなさい」

僕は慌てて妹を制した。

どうにも、イリーナは気にくわないことがあると喧嘩腰になる。

マヌエラは大人だった。

「私はただ本国の指示を執行しているだけのこと。それでは失礼する」