連続ボドゲ小説 〜カタンの開拓者たち〜 5

連続ボドゲ小説とは、企画班の所長がボードゲームの設定を活かしてゲームを文章化した作文である。

9.蛮行

僕たち……ループレヒト派に並んで最も栄えているミドラ地区との小競り合いは避けたかったが、マヌエラの上陸から1年後にはその対立は避け難いものになってきていた。

ミドラ地区は、小麦の生産や良質な土の採掘が豊富で、街道の整備を熱心に行い新しい村を作り続けている。

僕たちは集落の数こそ少ないが、人口を集中させて都市化を図っている。

その為狙いやすいのか、一度は追い払った賊が勢力を増して何度か領域に侵入して狼藉を働いていた。

その度に騎士団が追い払いに行き、また賊は別の場所に移動して……といういたちごっこを繰り返している。

このような事が今後も続くと、カタン島の発展にも影響が出てくるのは明白だった。自然、騎士団を増強するしかないという結論に達する。

そんな折にもたらされたオスヴァルドからの報告。その内容は衝撃的だった。ミドラ地区が賊と結託し、我々の発展を阻害しているというのだ。

ミドラ地区の指導者は、元々父とは仲が良かったアタナージウスという男だった。

アタナージウスが、僕たちの邪魔をする理由は明らかだった。

本国からの使者であるマヌエラが帰還後のカタンで、島の主導権を握りたいからだろう。

マヌエラの任期は3年。

彼女が本国へ戻った際にカタン島の代表者として誰を報告するのかという点は僕も気にしていた。

だが、カタン島の代表として本国から推挙される為に、競争相手に賊を使って発展を阻害するのは、結局は島全体の価値を下げる行為だろう。

我らの騎士団長オスヴァルドとの情報交換を兼ねた食事。だが、その味はなんとも苦かった。

「オスヴァルド。アタナージウスの蛮行は阻止せねばならないな」

「……どうするんだ。この島で騎士団同士の戦争をするわけにもいかんぞ」

「……確かに。内々で争っていても仕方ないだろうし、しばらくはオスヴァルドに踏ん張ってもらうしかないな……。それに、島の発展は賊を使った足の引っ張り合いでは果たせまい。僕たちだけは先へつながることをしなくては」

「先……?」

僕は島の外を知らない。オスヴァルドもそうだった。

以前、賊によって石切場を占拠された事があったが、その時にどう解決したか。島の外から装備を仕入れたではないか。

例えばイリーナは知っている。島の外を。

島の外にはカタン島にはない道具があるだろう。それに、知恵も。

「島の外になにか糸口があるかも知れない。イリーナに会おう。奴の嫌がらせの対処はしばらく頼む」

明くる日、僕は港に潮風を浴びに行くことにした。

今やイリーナは港を仕切る一端の海の女だ。ハールと名付けられたその港から、何度も島から出て、海を隔てた最寄りのイデナーフェという町へ通い交易を行っている。僕たちの発展の基礎となる交易だ。

僕は港で積荷を選んでいたイリーナを見つけた。

「精が出るな、今度はいつ出る」

「ループレヒト兄様。明日よ。もちろん色々売りに行くんだけど、今回は石切場から出た黒くて透明な珍しい石を見てもらいに行くの」

「イリーナ。教えてほしい。イデナーフェ港にはどんなものがある? 島の外にあって、島の中にないものを僕は知りたいんだ」

イリーナはやや考え、笑顔を作った。

「そうね。例えば、学校とか、大きな市場があるわ。それと、様々な書物を集めた図書館。人々の代表者が集まっていろいろなことを解決していく議会という建物がある」

「なるほど。人々が集まれる場所か……」

「人が集まれば、発見があるのよ」

「発見?」

「そう。新しい事が始まるってこと!」

「なるほど……費用はかかるが、新しい村を闇雲に増やしても、カタン島の大きさには限界があるからな。何か島の外にある事を取り入れよう。イリーナ、ありがとう」

未開地はまだあるが、島の大きさは結局限られている。新しい発展は、村や町の中に見出すべきだという事だろう。